外国人が日本の銀行口座を開く方法

銀行 京都の暮らし

私は京都で外国人の生活サポートをしています。
今回はその事例として、「銀行口座開設のサポート」をご紹介します。

タイ人クライアントとの出会い・銀行口座開設サポート

ある日、タイ出身の男性から1通のメッセージが届きました。

“I recently moved to Kyoto. I'm reaching out to ask if you might be able to assist me with translation, documentation, and accompanying me while I open a personal bank account at Japan Post Office Bank.”

つまり、「ゆうちょ銀行で口座を開設したいので、翻訳・書類作成・同行をお願いしたい」
という内容です。

日本語が話せない状況での挑戦

彼は最近、京都に一人で移住したばかり。
まわりに頼れる知り合いもおらず、日本語を話すことも、書くこともできない状況とのこと。

私は正直に伝えました。
「書類の代筆はできますが、英会話はビギナーレベルです。翻訳機を使いながらの対応になりますが、それでも大丈夫ですか?」と。

すると、すぐに「OK!」という返事が返ってきました。
こうして、彼の銀行口座開設サポートがスタートしました。

異国で暮らす勇気に学ぶこと

それにしても、その国の言葉がわからないまま異国に移住する──。
その勇気と行動力には、毎回驚かされます。

「なんとかなるでしょ」という気持ちなのか、
それとも海外ではこういう挑戦が当たり前なのか…。

実際にサポートしている私のほうが、毎回勇気をもらっているように感じます。

なぜ、ゆうちょ銀行指定なのか

数ある銀行の中で、なぜ「ゆうちょ銀行」を選んだのか?
実はそこには、外国人ならではの大きなハードルがあります。

外国人の銀行口座開設に立ちはだかる「6ケ月ルール」

日本ではマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐため、
外国人が銀行口座を開設する際に厳しい基準が設けられています。

  • 在住期間が6カ月未満の人は口座開設不可
  • 就労証明がない外国人は不可
  • 在学証明書がない外国人も不可

こうした条件から、都市銀行や地方銀行では「口座開設できません」と断られるケースが少なくありません。

そもそも、マネーロンダリングとは?

マネーロンダリングとは、
犯罪や違法取引で得た資金を“まっとうな収入”に見せかける行為のことです。
資金の流れを追えなくしてしまうため、テロ資金や詐欺の温床になるとされ、
金融庁も厳しく規制しています。

👉 参考:金融庁|マネーロンダリング・テロ資金供与対策

ゆうちょ銀行は例外的に対応可能

そんな中で例外的に受け入れてくれるのが「ゆうちょ銀行」です。
在住6ヶ月未満であっても、一定の条件を満たせば口座を開設できます。

さらに近年では、多言語対応の「ゆうちょアプリ」から口座開設できる仕組みも導入され、
利便性が高まっています。

クライアントが窓口を希望した理由

しかし、今回のタイ人クライアントは
「確実に開設したいので、窓口で直接手続きをしたい」と希望されました。
担当者と対面で確認しながら進められる安心感は、とても大きなポイントなのですね。

銀行口座開設までの準備──地味だけど大事なやり取り

銀行口座の開設は、実際に窓口へ行っても、
「必要書類が足りません」といった理由で手続きできないことがよくあります。
だからこそ、事前の準備とやり取りがとても大切 なのです。

今回もクライアントと何度かメッセージを交わし、以下の確認を進めました。

  • 必要書類(在留カード・パスポートなど)のチェック
  • ゆうちょ銀行の場所が自宅や職場から近い場所にあるか確認
  • 銀行へ事前に電話し、その日に通帳発行が可能かどうか確認
  • 氏名のカナ表記や書類の記入欄をあらかじめメモにして準備

こうした地味な準備をしておくことで、当日の手続きをスムーズに進めることができます。

銀行口座開設当日

当日は、事前に「同行者あり」と銀行に伝えていたこともあり、
受付からスムーズに手続きが始まりました。
窓口に行ってしまえば、あとは必要書類を提出して、
申請用紙に必要事項を書き込むだけです。
窓口の職員の方もとても丁寧で、一つずつ確認しながら進めてくださったため、
安心して書類記入のサポートを行うことができました。

想定外のハードル

ところが、思わぬ問題が発生しました。
クライアントは現在「会社設立の準備中」で、まだ明確な在職証明がない状態だったのです。

そのため、職員の方からは次のような説明がありました。

「送金や振込など、一部の取引に制限がかかります」

これにはクライアントも少し戸惑いを見せていました。
私自身も「在留資格が“経営・管理”なら会社はすでに設立済み」と思い込んでいたため、
予想外の展開でした。

書類不足の現実

事前に必要書類を確認した際、クライアント本人からは「全部揃っている」と聞いていました。
しかし、実際には就労証明や会社関連の書類が不足しており、
それ以上はどうすることもできません。

私は行政書士や司法書士ではないため、それ以上のアドバイスまではできません。
そこで「契約している書士の先生に相談してください」とお伝えし、
今回はサポートを終えることになりました。

通帳を手にして、彼がホッと笑った日

ゆうちょ銀行での手続きが完了し、無事に通帳が本人の手に渡された瞬間。
クライアントの表情がふっとゆるみ、安心したように微笑んだのが印象的でした。

「一人じゃ無理だった。本当にありがとう。」

その言葉が、私にとって何より嬉しいものでした。
私がしたことは、ほんの一つの手続きサポート。
けれど、彼にとっては、“日本で安心して暮らしていくための第一歩” だったのです。

特別な資格がなくても、これまでの経験は誰かの役に立つ。
それを改めて実感できた瞬間でした。
これからも、そんな “小さな仕事” を、ひとつずつ丁寧に積み重ねていきたいと思います。

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